「解雇」とは、使用者が労働者との間の労働契約を解約することをいいます。
労働者には、一方で、「正社員」と呼ばれる労働者がおり、その労働者の場合、通常、使用者との間で「期間の定めのない労働契約」を締結しています。
他方、「期間契約社員」と呼ばれる労働者の場合、使用者との間で「期間の定めがある労働契約」を締結しています。したがって、使用者がこれらの労働契約を解約する場合は「解雇」ですが、有期労働契約の更新をしない場合は、「解雇」ではありません。通常、「雇用止め」や「更新拒否」と呼ばれます。
「解雇」というと、一般に、A : 労働者側の事情を理由とする解雇(懲戒解雇・通常解雇)と、B : 使用者側の事情を理由とする解雇(整理解雇)に分かれます。「懲戒解雇」は、職場規律違反に対する制裁のうち、最も重い処分です。これに対し、「通常解雇」は、労働契約上、予定されている解約です。
民法上は、使用者も労働者も、いつにでも解約することになっていますが、労働基準法上、使用者の解雇に法律上制限が設けられています。代表的なのが、① 差別的解雇の禁止(3条、その他、均等法6条4号、労組法7条1号)、② 報復的解雇の禁止(104条2項、その他、育介法10条、16条)です。
その他に、③ 労働能力喪失中の解雇の原則禁止(19条1項本文)、④ 解雇予告前の解雇の原則禁止(20条1項)があります(なお、就業規則や労働協約による制限もあります)。
さらに、労働契約法上、⑤「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする」(16条)とされています。いずれの解雇でも、解雇に合理的理由が求められます。特に、「整理解雇」の合理的理由については、判例上、
1:人員整理の必要性があること、
2:解雇回避努力が尽くされたこと、
3:人選基準とその適用が合理的であること、
4:労働組合もしくは被解雇者と十分協議したこと、
という4つの要件ないし要素として判断しています。
契約期間中は、「やむを得ない事由」か、使用者の破産開始決定がある場合でなければ、民法上、使用者も労働者も解約できません(621条、631条)。問題となるのは、「雇用止め」の場合です。労基法上、「期間の定めのある労働契約」の期間の上限を規制する規定(原則3年)はありますが(14条1項)、有期労働契約自体を規制する規定がありません。そうすると、使用者は、期間満了後は、常に更新を拒絶して「雇用止め」ができることになってしまいます。
しかし、判例は、
① 有期契約が当然に更新されて、実質上期間の定めのない契約と異ならない状態にあると認定できる場合と、
② ①までの認定はできないが、恒常的作業に従事する労働者で、ある程度の継続が期待され、現に契約が更新されてきたなどの事情がある場合に、
「雇用止め」にも解雇権行使の濫用法理の類推適用を認めています。更新拒絶が無効の場合、「雇用止め」があっても、従前の有期労働契約が更新されたのと同様の法律関係になります。したがって、この要件認定がとても大事になります。